避難・一時移転の違いって何?指示が出たときの基本行動
原子力防災で出てくる「避難」と「一時移転」は、どちらも放射線による被ばくを減らすために、その地域から離れる防護措置ですが、実施される状況やタイミングには違いがあります。
「避難」は、放射線による被ばくを避けるため、対象となる地域から速やかに離れる防護措置です。
「一時移転」は、緊急の避難が必要な地域と比べて空間放射線量率などは低いものの、そのまま生活を続けた場合の無用な被ばくを減らすため、一定期間のうちにその地域から離れる防護措置です。
言葉は似ていますが、大切なのは自己判断で移動を始めるのではなく、国や自治体などから発信される情報や指示を確認して行動することです。この記事では、「避難」と「一時移転」の違いや、指示が出たときに確認しておきたい行動をわかりやすく紹介します。
1.「避難」と「一時移転」の違いとは?
避難とは?
「避難」とは、放射線による被ばくを避けるため、対象となる地域から速やかに離れる防護措置です。
原子力災害時にとる行動は、原子力施設からの距離や事故の状況などによって異なります。PAZでは、原子力施設が全面緊急事態に至った場合、放射性物質の放出前から避難などの防護措置が行われます。一方、UPZでは全面緊急事態となった場合は屋内退避を基本とし、原子力施設の状況によっては一部の地域で避難などの防護措置が行われる場合があります。放射性物質の放出後は、緊急時モニタリングの結果などに基づいて、必要な地域に避難や一時移転の指示が出されます。自分のいる地域に出されている指示を確認して行動することが大切です。
PAZ・UPZについて詳しくは、「PAZ・UPZって何?自分の地域が対象か確認しよう」で紹介しています。
一時移転とは?
一時移転は、避難ほど緊急性は高くないものの、その地域にとどまり続けることによる被ばくを減らすため、一定期間のうちに対象地域から離れる防護措置です。放射性物質の放出後に行われる緊急時モニタリングの結果などに基づいて対象地域が判断され、国や自治体などから出される指示に従って移動します。
避難や一時移転では、高齢者、障がいのある人、乳幼児、妊娠中の方、病気やけがのある人など、移動に時間がかかったり、支援が必要になったりする場合があります。
平時から、自分や家族に必要な支援、移動方法、薬や医療機器などを確認するとともに、自治体の避難計画や支援体制についても確認しておきましょう。

2.「避難」「一時移転」はどうすればいいの?
避難や一時移転の指示が出たら、まず「自分のいる場所が対象になっているか」を確認します。原子力災害時の防護措置は、地域ごとに実施される場合があるため、市町村名や地区名など、国や自治体から発表される対象地域を確認することが大切です。
家族が別の地区にいる場合、それぞれに異なる指示が出ることもあります。自宅、学校、職場など、今いる場所によって取るべき行動が異なる場合があるため、無理に集合しようとせず、それぞれの場所で発信されている情報や指示を確認しましょう。
次に、「どこへ、どのように移動するか」を確認します。原子力災害では、地域の避難計画などで避難先や避難経路が定められていますが、緊急時モニタリングの結果、道路状況、避難先の受け入れ状況などによって、実際の案内が調整される場合があります。自己判断で移動先や経路を決めず、自治体などから発信される案内を確認してください。
車で移動するときは?
車で避難する場合は、自己判断で移動先や経路を決めず、自治体から案内される避難経路や交通規制などを確認して移動してください。
避難に使う移動手段は、地域の避難計画や世帯の状況などによって異なります。自家用車のほか、バスや福祉車両などが用意される場合もあるため、緊急時には自治体から案内される移動方法を確認して行動しましょう。
家族と離れているときは?
学校や職場などで家族と離れているときに原子力災害が発生した場合、心配だからとすぐに迎えに向かうのではなく、まずそれぞれの場所から発信される情報を確認しましょう。
学校、保育園、福祉施設などでは、それぞれの避難計画や対応方針に基づいて、屋内退避や避難、保護者への引き渡しなどが行われる場合があります。施設から案内が出ている場合は、その内容に従って行動してください。
平時から、学校や施設で災害が起きた場合の連絡方法、保護者への引き渡し方法、避難した場合の行き先などを家族で確認しておくと、緊急時にも行動しやすくなります。

3.「避難」「一時移転」の注意点は?
避難や一時移転の指示が出たとき、近所やSNSなどで避難経路や避難先についてさまざまな情報が流れることがあります。ただし、原子力災害時には、交通規制や避難先の受け入れ状況、避難退域時検査の実施場所などを踏まえて避難が行われます。
自己判断で移動先や経路を変更せず、自治体などから案内される避難先、避難経路、移動方法を確認して行動することが大切です。
避難退域時検査について
放射性物質の放出後に、避難や一時移転の対象となった場合には、避難の途中で「避難退域時検査」が行われます。
避難退域時検査は、車両や衣服、体の表面などに放射性物質が付着していないかを確認し、基準を超える場合には必要に応じて簡易除染を行うためのものです。
検査を行う場所は、住民の避難や一時移転を妨げないよう、避難経路上やその近くなどに設定されます。実際の緊急時には、自治体などから案内される経路や検査場所を確認して移動してください。
避難退域時検査の流れについて詳しくは、「避難退域時検査って何?避難中に行われる確認の流れ」で紹介しています。
避難先に到着したら
避難先に到着した後も、受付方法やその後の対応は避難先や地域によって異なります。自治体や避難先の職員から案内がある場合は、その内容を確認してください。
避難後も状況が変わることがあるため、国や自治体などから発信される情報を引き続き確認し、次の案内や指示に従って行動しましょう。
原子力災害時に確認したい情報源については、「原子力災害時に信頼できる情報源まとめ」で紹介しています。

まとめ
避難や一時移転は、原子力災害時に放射線による被ばくを減らすために行われる防護措置です。それぞれ実施される状況やタイミングが異なるため、違いを知っておくことが大切です。
実際の緊急時には、自己判断で移動を始めるのではなく、国や自治体などから発信される情報を確認し、自分のいる地域に出されている指示に従って行動してください。
平時から確認しておきたいこととして、次のようなものがあります。
- 自分の市町村の原子力防災ページを見る。
- 家族で連絡方法を決める。
- 緊急持ち出し袋を作る。
- 車での避難に備えて、燃料の残量を確認しておく。
- 薬やお薬手帳をまとめる。
- 学校や職場の緊急時対応を確認する。
こうした準備を平時からしておくことで、緊急時にも情報を確認しながら落ち着いて行動しやすくなります。
参考・公的資料
- 原子力規制委員会:原子力災害対策指針に基づく防護措置の考え方
- 原子力規制委員会:原子力災害対策
- 原子力規制委員会:原子力災害時における避難退域時検査
- 茨城県:原子力防災
- 内閣府 原子力防災:よくある御質問
掲載情報の最終確認日:2026年10月2日