安定ヨウ素剤とは?役割・服用指示・PAZ/UPZでの違いをわかりやすく解説
まず、安定ヨウ素剤について知っておきたい3つのポイントを確認しましょう。
- 放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくを予防・低減する薬
- 事故が起きても自己判断で服用しない
- 国・自治体などからの指示に従う
このページは平時の学習・事前確認を目的としています。実際の災害時は国・都道府県・市町村などから発表される最新情報を確認してください。
安定ヨウ素剤は、原子力災害が起きた際に、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくを予防・低減するために使用される薬です。原子力事故が起きたからといって、自分の判断ですぐに服用するものではなく、必要な場合は国や自治体などから出される指示に従って服用します。
1.安定ヨウ素剤とは?どんな役割がある?
安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくを予防・低減することを目的として服用される薬です。
甲状腺には、ヨウ素を取り込む性質があります。
原子力災害などによって放射性ヨウ素が環境中に放出され、呼吸などを通じて体内に取り込まれると、甲状腺に集まることがあります。
適切なタイミングで安定ヨウ素剤を服用することで、甲状腺が放射性ヨウ素を取り込む量を減らし、甲状腺の内部被ばくを予防・低減する効果が期待できます。
安定ヨウ素剤でできること・できないこと
安定ヨウ素剤には、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれる量を減らし、甲状腺の内部被ばくを予防・低減する働きがあります。
できること
- ○ 放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくを予防・低減する
一方で、安定ヨウ素剤は放射線や放射性物質による影響をすべて防ぐ薬ではありません。
できないこと
- × 放射性ヨウ素以外の放射性物質による内部被ばくを防ぐ
- × 外部被ばくを防ぐ
- × 屋内退避や避難などの代わりになる
そのため、安定ヨウ素剤を服用したからといって、屋内退避や避難が不要になるわけではありません。原子力災害時には、屋内退避や避難、一時移転など、状況に応じた防護措置とあわせて対応することが重要です。

2.なぜ自己判断で服用してはいけない?
安定ヨウ素剤は、必要な場合に適切なタイミングで服用することが重要です。
原子力災害が起きたからといって、すぐに安定ヨウ素剤を服用するわけではありません。原子力施設の状況や緊急時モニタリングの結果などを踏まえて服用の必要性が判断され、必要な場合に国や自治体などから服用の指示が出されます。
そのため、「念のために飲んでおこう」「早く飲んだ方がよいだろう」と自分で判断せず、服用の指示に従うことが大切です。

3.PAZとUPZでは安定ヨウ素剤の配布・服用はどう違う?
安定ヨウ素剤の配布方法は、原子力施設からの距離や地域の防災計画などによって異なります。
原子力災害対策では、原子力施設の周辺地域を「PAZ」と「UPZ」に分け、それぞれの区域に応じた防護措置があらかじめ考えられています。
PAZの場合
PAZ(予防的防護措置を準備する区域)は、発電用原子炉の場合、原子力発電所からおおむね5kmを目安とする区域です。
PAZでは、原子力災害が発生した際に速やかな避難などの防護措置をとれるよう、平時から安定ヨウ素剤を事前配布する体制が整えられています。
事前に安定ヨウ素剤を受け取っている場合でも、自分の判断で服用せず、緊急時に出される服用の指示に従うことが重要です。
UPZの場合
UPZ(緊急防護措置を準備する区域)は、発電用原子炉の場合、PAZの外側のおおむね5〜30kmを目安とする区域です。
UPZでは、原則として安定ヨウ素剤を自治体などが備蓄しています。避難や一時移転などが必要になった場合には、状況に応じて安定ヨウ素剤が配布され、服用の指示が出された場合は、その指示に従って服用します。
ただし、地域の事情によっては、UPZでも安定ヨウ素剤が事前配布されている場合があります。そのため、自分の住んでいる地域でどのような配布方法がとられているか、平時のうちに自治体の情報を確認しておくことが大切です。
PAZ・UPZのどちらに住んでいる場合でも、安定ヨウ素剤は自己判断で服用せず、国や自治体などから出される指示に従ってください。
4.平時と緊急時に確認しておきたいこと
平時に確認しておくこと
安定ヨウ素剤については、原子力災害が起きてから初めて確認するのではなく、平時のうちに自分の地域での配布方法や保管場所などを確認しておくことが大切です。
- □ 自分の住んでいる地域がPAZ・UPZに含まれているか確認する
- □ 自治体で安定ヨウ素剤がどのように配布されるか確認する
- □ 事前配布を受けている場合は、保管場所を家族で共有する
- □ 手元にある安定ヨウ素剤の使用期限を確認する
- □ 緊急時に自治体から情報を受け取る方法を確認する
事前配布された安定ヨウ素剤がある場合は、直射日光や高温多湿を避けて保管します。緊急時にすぐ確認できるよう、家族で保管場所を共有しておきましょう。
緊急時にすること
原子力災害が発生したときは、安定ヨウ素剤をすぐに服用するのではなく、まず国や自治体などから発表される最新情報を確認します。
屋内退避や避難などの指示とあわせて、安定ヨウ素剤の服用が指示されているかを確認することが大切です。
- STEP 1 国・都道府県・市町村などから発表される公式情報を確認する
- STEP 2 屋内退避や避難、一時移転などの指示が出ている場合は、その指示に従う
- STEP 3 安定ヨウ素剤の服用について指示が出た場合は、示された方法に従って服用する
- STEP 4 自己判断での服用や、指示されていない追加の服用はしない
安定ヨウ素剤を持っている場合でも、原子力事故が発生したという情報だけで自己判断して服用しないでください。実際の災害時は、服用の指示を確認して行動しましょう。
5.妊婦・授乳婦・子どもについて知っておきたいこと
妊婦・授乳婦・子どもについては、安定ヨウ素剤の服用に関して特に知っておきたい点があります。
原子力災害対策指針では、妊婦、授乳婦、未成年者(乳幼児を含む)は、安定ヨウ素剤の服用を優先すべき対象者とされています。特に年齢が低いほど、放射性ヨウ素による甲状腺への影響に配慮することが重要です。
そのため、「妊娠中だから飲まない」「子どもだから飲ませない」と自己判断するのではなく、服用の指示が出た場合は、自治体などから示される方法や服用量に従ってください。
子どもは年齢によって服用量などが異なる
安定ヨウ素剤は、年齢によって服用量や使用する剤形が異なります。乳幼児にはゼリー剤などが用いられる場合があります。
具体的な服用量や飲み方は、自分で判断せず、配布時の説明や自治体などからの指示に従ってください。
なお、新生児が安定ヨウ素剤を服用した場合は、甲状腺機能の経過観察が必要とされています。
6.安定ヨウ素剤でよくある3つの誤解
Q1.安定ヨウ素剤を飲めば、放射線から完全に守られる?
いいえ。安定ヨウ素剤が対象とするのは、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくです。
外部被ばくや、放射性ヨウ素以外の放射性物質による内部被ばくを防ぐものではありません。そのため、安定ヨウ素剤を服用した場合でも、屋内退避や避難などの指示には従う必要があります。
Q2.早く飲めば飲むほど効果が高い?
いいえ。安定ヨウ素剤は、適切なタイミングで服用することが重要です。
原子力事故が起きたという情報だけで服用するのではなく、国や自治体などから服用の指示が出た場合に、その指示に従って服用してください。
Q3.家族全員が同じ量を飲めばいい?
いいえ。安定ヨウ素剤は、年齢によって服用量や使用する剤形が異なります。
特に子どもは年齢に応じて服用量や剤形が分けられています。具体的な量や飲み方を自分で判断せず、配布時の説明や自治体などから出される指示に従ってください。

7.自分の地域の情報を確認する
安定ヨウ素剤の配布方法や受け取り方は、住んでいる地域によって異なります。
まずは、自分の地域がPAZ・UPZの対象地域に含まれているかを確認し、あわせて都道府県や市町村が発信している原子力防災情報を確認しておきましょう。
あわせて確認したいページ
緊急時には、このサイトの情報だけで判断するのではなく、国・都道府県・市町村などから発表される最新の公式情報を確認して行動してください。
まとめ
安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくを予防・低減するために使用される薬です。
ただし、放射線による影響をすべて防ぐものではなく、屋内退避や避難などの防護措置に代わるものでもありません。また、原子力事故が発生したからといって、自己判断ですぐに服用するものではありません。
平時には、自分の地域での配布方法や保管場所、使用期限などを確認しておきましょう。緊急時には、国・都道府県・市町村などから発表される最新の公式情報を確認し、屋内退避や避難、安定ヨウ素剤の服用などに関する指示に従って行動することが大切です。
参考・公的資料
- 内閣府 原子力防災関係資料:安定ヨウ素剤関係
- 内閣府 原子力防災:よくある御質問(安定ヨウ素剤)
- 原子力規制委員会:原子力緊急時における安定ヨウ素剤の配布・服用
- 原子力規制委員会:原子力災害対策指針及び関連文書
内容確認日:2026年9月30日